森野大地

Morino Daichi

Flashing body

インスタレーション|プロジェクター、ガードレール、ブラウン管TV、DVDプレーヤー、照明器具、レースカーテン、白シャツ、イヤホン、iPod、タブレット、ほか
Installation art|Projector, guard rail, CRT TV, DVD player, lighting equipment, lace curtain, white shirt, earphones, iPod, tablet, other

映像
Movie
4mn 30sec

作者より

男の中には女がいて、機械の中には人間が潜んでいる。
目には見えなくても、ここに、確かに存在している者。
この体がただの表面でも、
この体を脱ぐことはできないということ。
行き着く先にはいつも、そんな当たり前の絶望が待ち受けている。
行き場のない亡霊たちが生きていくためにはまず、
自分を抱き締めて、紛れもない自身の体を認めていかなくてはならなかった。

森野大地

担当教員より

壁に大きく映し出された若い男は、以前その部屋で隣に眠っていた「彼」のことを静かに語り始める。その男の声は儚げな女性の声に巧みにすり替えられ、語りの中の「僕の中の女」という印象的な言葉にぴたりとあてはまる。男/女が語る言葉、「暗闇で機械のように光る彼の乳首」や「事故で亡くなった人の亡霊」は、どこに着地することもなく空間を漂っている。そして床には映像の光に照らし出されるように、話にまつわる現実のものらが無造作に置かれている。光る乳首が映るモニター、男のシャツ、背後のカーテン、白く光る巨大なガードレール。少女のような声で語られる身体と心の違和は、事故で身体から切り離された被害者の亡霊が、白いガードレールに乗ってこの場所に滑り込んで来るイメージに昇華される。ひとつだった時には何でもなかった身体と心、それらが引き裂かれる人の死、セクシュアリティという逃れようのない現実。向こう側の世界とつながる乗り物としてのガードレールは、同時に凶器として突きつけられる。行き場のない哀しみが観る者の身体を貫いていく。

油絵学科教授 袴田京太朗