山本明日香

Yamamoto Asuka

盆の抜け殻
The Obon felt empty

インスタレーション|ミクストメディア|キャンヴァス、油絵具、石粉粘土、スチレンボード、ほか
Installation art|Mixed media|Canvas, oil paint, stone powder clay, styrene board, other
H3000 × W4000 × D3000mm

作者より

お盆の時の記憶。
祖父母の家に様々な年代の人が集まり、非日常的な空間が生まれる。そして時々誰かがいなくなったり、新しい人が増えたりする。この空間にいる一人一人は変わっていくが、その繰り返しは変わらない。
その記憶さえ、現在が降り積もっていく中で忘れていく。私は現在にある物質から要素を抽出し、繰り返し、記憶のイメージを更新しながら表現している。

山本明日香

担当教員より

触れるイメージ、触れないイメージ
絵画は、四角いキャンバスに何か描けば成立するというものではない。絵に到達するためには、その人独自のルートを見つけ、“回り道”をしなければならない。ちょうどタルコフスキーの「ストーカー」の主人公が“ゾーン”に行くのに、リボンを結んだナットを投げてその道を見つけるように。
山本明日香は、お盆の時の家族の集まりの写真から子供と祖父を引き出し、ドローイングし、コピーをし、立体をつくる。その立体とは頭のなかにつくられるイメージの具体化であり、触さわれる像(イメージ)である。通常、絵を描く人はこの過程をドローイング、あるいは頭のなかでやるが、彼女は立体として実際に像をつくる。そうして初めて絵を描くのだ。
このとき絵のなかの像(イメージ)は触れるものではなく、絵でしか成立しえない独特のものに変貌する。立体の棒状物は絵では震えるような線となって曖昧な像と呼応する。このようにしてかろうじて絵というものが生まれ、立体の像が置かれている重力のくびきを逃れ、壁に浮遊する。そのあり方は感動的ですらある。

油絵学科教授 長沢秀之