林陸也

Hayashi Rikuya

Black and Blue

ファッションショー|布、スピーカー、ほか
Fashion show | Fabric, people and sound, other | 7min
7分

作者より

それは季節、だったかもしれないし、時代、と呼んでも差し支えない。もしくは恋や夢と書いた方がしっくりくるのだろうか。しかし、そのどれもわずかに的を外している気もする。
いずれにせよ、今まさに終わろうとしているそれ、つまり終わろうとしている季節、時代、恋、夢、のようなもの。について語るほど難しいことはない。
なぜならそれらは一種の熱病のようなものである。当の本人から見れば非常に濃密な期間であっても、周囲から見れば、薄ぼんやりした記憶しか残っていない、なんてことが往々にしてある。
かといって、僕が描こうとしている「それ」は麻疹や恋患いのように、誰もが一度は、といった類の経験でもない。これがおそらく、前出の言葉だけでは射抜けなかった原因であろう。
夜の多摩川にも、ハーレムの八階建てのオンボロアパートにも、新宿の高層ビルの一室にも、そして、今ここにも確かに僕は存在していたのだから。
僕にとって「学生生活」を一言で呼び表すのはそれほどに難しく、代わりに僕はそれを「青春」と呼んだ。
あなたにとってもそれが「青春」であると期待しながら。
最後に、今回の作品に携わってくれた友人や後輩たち、僕の作品を見てくださった皆様、いつも僕の為に美しいアートワークをデザインしてくださっている渡部糸女氏、今まで多大な支援を続けてくださった家族に心から御礼申し上げたい。そして、僕が大好きな人たちや音楽や芸術に敬意を。
この作品が、あなたたちとの合作であることを誇りたい。
ちなみに、あなたが目撃した作品のタイトルは「Black and Blue」、喪を意味する「Black=黒」と青春の「Blue=青」そして英語で「Black and Blue」は体に残った痣を意味する。
8人の美しいモデルと、それを引き立てるお洋服たちとともに、僕たちの旬をどうか楽しんで頂きたい。そして僕たちとあなたが同じく過ごした青春を慈しんで頂ければ幸いである。
そもそも、これで本当に青春は終わっちゃうの?

林陸也

担当教員より

ファッションを学ぶうえでパフォーミングアートを優位に捉える事が多くなり、現実的なファッションと対峙する事が減る傾向にあると思われる環境で、林陸也の表現する衣服はエレガンスとワイルドを融合させ、ファッションが機能する場面は日常であるという事を再確認させてくれる役割も担った優秀な作品でした。

空間演出デザイン学科教授 津村耕佑