杉村かれん

Sugimura Karen

山阿図書館
sana library

模型材料
Model material
H1200 × W1400 × D5500mm

作者より

小説を読んだときの、あの世界観に引き込まれて、どんどん没入していく感覚が好きです。
また読んだ後に、あのセリフはどういう真意があったのだろうとか、あの表現は本当に素敵だったなとか、ぼうっとしながらその小説の余韻に浸るのが好きです。

小説を読むというのは、ただ文字を追って情報を得るだけではありません。文章の奥には、その文章よりもはるかに広い世界が広がっていて、そこを感じるのが楽しいのです。

私はこの小説を読むという行為だけに向き合った最高の空間の一つの正解を、ここに打ち出そうと思います。
ただ、読むだけではない。小説の持つ全てを、考え、感じ、その世界にすっかり身をまかせる事のできる場所。

その答えとして、私が今回作り上げたのが、今回の作品です。

杉村かれん

担当教員より

杉村はこれまで“小説”という空間の耽美な魔力に取り憑かれ、終始一貫テーマとして作品づくりに取り組んできた。卒業制作として選んだのも、文学の魅力を具現化し、没入させる空間体験だ。
想定現場はあきる野市/秋川渓谷。そのリアルな情景を選ぶことで、ここでこれから展開される、抽象的で詠み人それぞれの空想余地を残した、施設デザインの性格を際立たせる事となった。
“読書”をコンセプトにしたテーマパークは、杉村が愛した作品にインスピレーションを得た、それぞれの建築を巡ることで展開していく。
リアルとフィクションはせめぎあいながら曖昧に、思考の内と外、環境の内と外をシームレスに彷徨う。
物資概念としての空間と脳内にひろがる無限宇宙は、溶け合いながら理想郷として完成した。

空間演出デザイン学科教授 片山正通