村上草太

Murakami Sota

遷宮する集落
Transfer of settlements

桐、シナベニヤ、水、河原石、培養土、自然草、ほか
Paulownia, linden plywood, water, riverstone, culture soil, natural grass, other
H1800 × W910 × D3640mm

作者より

一、かつて日出る処に、自然や大地に根ざして生きる人々がいた。

二、彼らは信仰に生きる過程で、循環する自然の摂理を知る。

三、この仕組みを学んだ人々は、どんな災害や腐食にも負けない永遠の家屋や集落を作るのではなく、それらを建て替えていくことで共同体の存続を図った…

日本には古来から皆で何かを建て替え続けていくことによって、そのものの永遠性を保つという風習や思想がいくつかある。
鴨長明の「方丈庵」、白川郷の「結・合力」、伊勢神宮の「式年遷宮」。
これらを紐解き、集落という形に昇華することで、村そのものに根ざして生きるという自分の理想の暮らしを体現しようと考えた。
約20年のサイクルで建て替えられることで、集落自体が生命や自然のように過去→現在→未来へと新陳代謝していく様を概念的な模型として立体化している。

村上草太

担当教員より

我々は世界最古の“日本”という国に生まれた。
この国のエタニティー/永遠とは、作り替え続けるという信じられないぐらいモダンな思考で構成されている。更に、“森羅万象すべてに神は宿る”という宗教感に、古いとか新しいという概念は存在しない。
村上は自らの理想的な暮らしを夢想する中で、この最も遠く最も近い概念に出会った。
西暦2020年に提案された〈遷宮する集落〉の提案に、最初は戸惑ったが、しかしそれは提案ではなく、存在し続ける意味においてのオブジェクトなのだ。
オリジナルデザインを一切排除し、木材のみによって作られた潔いモデルの存在は、概念だけが抽出され、不思議なことに何故かとても新しい試みのように感じられる。

空間演出デザイン学科教授 片山正通