水野ひまわり

Mizuno Himawari

アトノマツリ
atonomatsuri
インスタレーション|プロジェクター、セメント、ブルーシート、木材、ダンボール
Installation art | Projector, cement, blue sheet, wood, cardboard
可変

作者より

島根県の中心に位置する川本町。
人口は約3000人。
この町は約50年後、
人口減少の影響で
存続が難しくなると
言われている。
私はこの町で生まれたわけではないが、
あるきっかけから、
この町に何度も訪れるようになり
川本町が愛しい町となった。
だが今現在、
この町に住む人は
危機感や不安を
感じることはほとんどない。
言葉でどんなに言われても
起きていないことを
実感することは不可能だ。
死も死がおとずれてからしか
わからない。
それと同じように
この町の終わりも、
終わってからしかわからない。
そして終わった後、
すべては後の祭りになるだろう。

人がいなくなる、
そして、人がいられなくなる。
だから私はここに、川本町の終わりとは
何かを想像し、仮定した作品を制作した。
この町が好きだからこそ、この町の終わり
を作り、向き合う。
これが正解か、不正解かはわからない。
だから試すのだ。

町がなくなるとは、
何がなくなることなのか。
何度も想像し、考える。

この作品から、
終わりを仮定し、
終わらせないための
挑戦の始まり。

水野ひまわり

担当教員より

作者は島根県川本町と東京を行き来し、壁画制作をきっかけに町の人々との親交を深めてきた。その活動を通して都市にはない町の豊かさに気づいた。
展示では、人口減によって50年後に消えゆく町の姿を想像させる仕掛けや、島根から運んだ丸太とコンクリートで象った「木」を蝶番でつなぐ造形など、作者の現在地と島根の「未来」をつなぐインスタレーションを展開した。
現実と地続きにある世界に新たなリアリティを探求する姿勢を評価した。

空間演出デザイン学科准教授 鈴木康広