蔵満明翔

KURAMITSU Atomu

野生の地図
Wild map

インスタレーション|ミクストメディア
Installation art | Mixed media
サイズ可変

作者より

展示名を《野生の地図》と題して人工と自然、身体と非身体といった二項対立の境を揺さぶりあやふやにすることを試み制作しました。展示は登山家のインタビューを中心とした谷川岳のドキュメンタリー映像、指紋を地図上の等高線に見立て作成した新しい地形と身体、木片に塗られた絵具にグラインダーでドローイングを施した平面、アンダー・ザ ・シーを水中で歌い息が切れると水上に出て呼吸し再び水中で歌い続ける映像、地形の構造を身体で模倣したパフォーマンス映像で構成されています。それぞれ違った側面を持つ作品が緩く歪に繋がり関係し合う、個展でありながらグループ展のような装いをした展示です。

蔵満明翔

担当教員より

蔵満は、キュレーターでありアーティスト。一方冒険家としての顔を持つ。作品《野生の地図》は蔵満によるキュレーションの展覧会であり、そこに参加しているアーティストは、ダンサー、画家、デザイナー、映像作家の4人である。しかしその4人は全て蔵満自身であり、アーティスト名も自分の名前から取ったものである。このことは、ステイトメントにあるように二項対立によって世界を描くのではく、あらゆるものの間にはグラデーションのように手付かずの領域が広がっており、それを蔵満は「野生」として捉える。自らのアイデンティティも複数化することで蔵満自身の内にも「野生」の広がりを見ようとしているのだろう。雪山の登頂を目指すこと、パソコンのモニターの向こう側に触れること、海中の世界を想うこと、いずれの作品においても、蔵満が位置するこの場から向こう側の世界をイメージすることを試みる。しかし、蔵満の作品における狙いは、イメージや世界の具現化ではなく、イメージを追い求める人間の肉体の限界、イメージと肉体との境界面における衝突であり、境界面に潜む前人未到の「風景」を立ち上げることにある。翔四郎による日本山岳文化についての映像作品《Tanigawa document》で語られているように、死と隣り合わせの状況に立たされた者でしか見ることが出来ない「風景」が在る。蔵満による冒険のアーカイブは、展示空間に配置されることで、後続者にとっての道標になるだろう。

油絵学科准教授 小林耕平