佐伯瑠美

SAEKI Rumi

水たまり
Puddle

キャンバス、油絵具
Canvas, oil paint
H1620 × W2590mm

地割れ
Fissure

キャンバス、油絵具
Canvas, oil paint
H1620 × W2273mm

くぼみ
Hollow

キャンバス、油絵具
Canvas, oil paint
H1620 × W1940mm

作者より

雨が降って
水が地面を覆っていく
低くくぼんだところに向かって
水は流れ込み、集まって、たまっていく

やがて硬く乾いていった地面は
次第に歪み、終には裂けてしまう
裂け目からは、生あたたかく、軟らかい、絶えず微かに動き続ける[地]が現れる

佐伯瑠美

担当教員より

佐伯瑠美は、以前から描いていた水たまりのイメージの他に「地割れ」「くぼみ」というタイトルの、いずれも地面をモチーフにした絵を卒業制作とした。
M200号の「水たまり」は、最初はひとつの水たまりが、干上がる過程でふたつの水たまりになったものを描いたという。左右に分かれた大小の水たまりが呼応するように滑らかな曲線を描いて、画面のほぼ中央に据えられている。赤茶色の地に黒で描かれた水たまりの周りに、元の大きな水たまりの痕跡がうっすらと描かれている。形は平面的かつシンプルで描き込む余地がない。それが単調にならぬように、画面の中での形や筆触、形が接する際の処理には十分な配慮がなされていて、絵とじっくり対話した時間が積み重なっているように感じる。じっと観ていると、水たまりは島にも見えてくる。そう思うと画面の地の部分が水になって関係が反転し、水というイメージは同じだが、干上がりつつある水が満たされていくイメージに変わり、なんとも不思議である。
佐伯にとって描くということは、見えた形の再現ではなく、描くことによって、モチーフと対峙した時に感じた様々な思いを画面に定着させることなのである。それを妨げる要素は省略する必要があり、省略することで本質に近づいていく。彼女の絵はシンプルだが、複雑であり豊かさが含まれている。

油絵学科教授 小林孝亘