津村果奈

TSUMURA Kana

青い晩餐
Blue supper

木製パネル、油絵具
Wood panel, oil paint
H652 × W910mm
H910 × W2460mm

作者より

手には人間の意思が現れる。ここでは顔の見えない人々が何かを食べようとしている。しかし、何を食べているのかは描いていない。リアルなモチーフが描かれているが、明らかにリアルでない空間を描きたいと思いこの作品を制作した。

津村果奈

担当教員より

美しいテーブルの青と食事をする無数の手が大胆にトリミングされた作品である。津村は入学当初から手をモチーフに制作することが多かったが、この卒業制作である「青い晩餐」はその集大成といえるだろう。
色とりどりの食材や色々な質感の食器を取り囲むように食事をする手が並んでいる。顔がないので判然とはしないが、おそらく若い人たちの手が並ぶその状況からは、豪華な食卓であるにもかかわらず沈黙し、擦れ合う食器の音しか聞こえない。抜群の描写力である。
食卓を描いた画家としては17世紀のオランダの画家フランス・ハルスを思い浮かべるが、彼は老人、子供、酔っ払いなどが集って食事をする風俗画で有名だ。「笑いの画家」と異名を持つのは、彼の描く人物の多くが笑っているからである。彼女がこの画家を知っているかどうかは分からないが、私は市井の人々を描いた彼の絵を思い出しながら、これら顔のない、沈黙の食卓が現在2020年からの社会の有り様を端的に語っているように思え、不気味でならないのである。

油絵学科教授 水上泰財