リュウ ハ

LIU Bo

ただいま

実写映画|47分32秒

作者より

主人公の直人が子供の頃、母親は家を出ていき、父親は再婚して新しい家庭を築いた。居場所がないと感じていた直人は孤独な少年時代を過ごした。父の死後、彼は故郷を離れ、二度と戻ることはなかった。
長いこと大都会を彷徨っている直人は、いつも、苦しい少年時代に自分に温かく接してくれた友人のタクミのことを思い出していた。しかし、そのタクミもいつしか跡形もなく直人の生活から消え去ってしまった。それは直人が抱えている心の蟠りとなった。
直人はタクミを探すために故郷に戻った。記憶の舞台となった場所で、記憶と現実は交錯し、すべてが美しい昔に戻っていくようであった。

リュウ ハ

担当教員より

過去を封印し都会を漂泊する男が帰郷する。港沿いの町に生まれ育ち、不在の「母」を求め続けた多感な少年二人の友情と孤独の記憶を鮮烈に浮かび上がらせる追想の旅。監督が故郷を重ね合わせた鹿児島の長期取材を元に土着を感じさせる乾いた情景を掬い上げ、繊細かつ切実な人物描写が観る者の琴線に響く。作者の豊かな感受性や想念がフィルターとなり、現実と記憶が交錯する作品には霊感と詩情が漂う。映像による確かな演出力を評価した。

映像学科教授 小口詩子