髙橋冴

TAKAHASHI Sae

シスター
sister

インスタレーション|綿布、パネル、油絵具、木材
H1820 × W7000 × D3500mm

作者より

本作品のタイトルである「シスター」は姉妹と修道女の2つの意味を含む。私は四人姉妹で、4人ともクリスチャンであり、この4人が本作品のテーマとなる。
4つのモチーフは4人それぞれのイメージと、私が出した質問(「大切にしている聖句」と「選んだ理由」)をもとに制作した。質問に対し、言葉や視点は異なるが、みんな神様の愛について語っていた。神様の愛を前にして、自分たちはあまりに脆く歪んでいるけれど、そのような弱さを含めて形にした。

髙橋冴

担当教員より

シスターと名付けられた4つの写実的な絵画作品は、高橋を含む4姉妹をテーマに制作されたものである。とはいえ描かれているのは抽象的な形態であり、それらは彼女によって一から制作された立体物である。彼女は姉妹をイメージしながら、布やレースまたは木材といった素材を使い、アンスロポモーフィック(擬人化された形態)を作り出した。そのようにテーマを設定した上でモチーフを制作し、それを描くといった方法はすでに3年ほど前から繰り返されており、フランシスコ・デ・スルバランの「神の子羊(アグヌス・デイ)」へのオマージュとして制作された作品など、既に数点存在している。
卒業制作展に於いては新たな試みとして絵画作品を壁面にではなく、床に自立させる形で展示していた。それに準じて絵画の中に描かれている床は、作品が置かれている床を擬似的に再現しており、まるでアンスロポモーフィックな物体がその場に佇んでいるようでもあった。
また、作品を支える為に赤松の小割で作られた構造体は一点一点の絵画との関係性を重視し組み立てられ、全ての形状が異なっていた。結果、観客は表である絵画だけを鑑賞すること無く、その裏側も鑑賞することになる。いや、そこでは表・裏といった概念は存在しないのではないか。なぜなら一見絵画を支えているかに見える構造体だが、実はそれを支えているのが絵画だということもいえるのであり、だからこそ、それらの作品は床に自立しているのではないのか。
高橋の作品は分かり易く愉悦に浸かれるような直接的で親切な作品では決して無い。確かな写実力に支えられている作品はアレゴリー(寓意)に満ち溢れている。分節出来ない情動や多種多様な物語が複雑に交差し絡まりながら、その作品は単純に理解されることを拒んでいるようですらある。だからこそ観者はその作品を凝視するのであり、想像を膨らませるのである。

*クリスチャンである彼女は姉妹らをイメージする際に、彼女らから聞いた聖句なども制作のヒントにしたという。

油絵学科教授 丸山直文