羊水サヤ

YOSUI Saya

そして夜明けを拒むでしょう
And will refuse the dawn


今日からあなたはわたしの夢だけをみる
From today you only dream of me

夜空を飛んであなたの夜の中へ
Fly in the night sky into your night

あの遠くにある木のなかの後ろ
The back in the tree in that distance

星の数と同じだけ
As many as the number of stars

蝶々
Butterfly

いつもあたたかく瞬く
Always warm and blink

満ちる途中
On the way to fill

Walk in a dream

キャンバス、油絵具、木炭
H1303 × W1940mm
H1303 × W1940mm
H1303 × W1940mm
H410 × W318mm
H500 × W400mm
H455 × W606mm
H300 × W400mm
H300 × W400mm

作者より

そして夜明けを拒むでしょう


今日はいつもとは違う道

花束を抱えて鯨の後を追いかけた

タプタプのコップに浮かべて

黄金の中に縁がちらちら泳いでいる

まだ行かないよ

やがて丸く消えていく

結末を揺らして通り過ぎていく

空を見上げたら月を探すから

真っ暗な夜もうめつくすほど

あなたの光になってあげる

美しくて醜い魂が零れる滴のように

いつしか蝶に呼ばれて天に還る

そして夜明けを拒むでしょう

羊水サヤ

担当教員より

羊水サヤの絵は、豊かな色調と柔らかな筆触で描かれていて、画面から受ける印象は暖かい。一見すると風景のように見えるが、何が描かれているのかを追っていくと風景という枠には収まらなくなる。上下左右も曖昧で重力も感じられず、形はじんわりと滲んで溶けていくようである。じっと見ていると揺らいでいるような感覚になる。
「夢の中を歩きながら描いている」という羊水は、単に自分が見た夢を再現的に絵に描いているわけではない。彼女がいう「夢」とは、寝ている間に見る夢であり、目覚めている時に見る夢でもある。「夢」は羊水にとって、視覚では見ていないが見ていると実感できる感覚であり、同時に現実のリアルな感覚でもあるのだと思う。
「夢」という感覚を手掛かりにして、その不可思議な世界と、重力があり肉体がある現実世界とのせめぎ合いの中で、彼女は絵を描き、描くことによって見えないものを見ようとしている。何が見えてくるのかは描いてみなければわからないが、描かなければ何も見えてこない。そして、見たことのないものを見るために描き続ける。
描くことは羊水にとって生きることなのだと思う。

油絵学科教授 小林孝亘