田内泰生

TANOUCHI Taisei

境目の無いプレイヤー
Borderless player

インスタレーション|液晶ディスプレイ、監視カメラ、セメント、キャンバス、アクリル絵具
サイズ可変

作者より

監視カメラを用いて中継して映し出された“どこか”の空間を頼りに、鑑賞者と映し出された映像が2つの展示場所を行き来します。それによって虚構の仮想空間(裏世界)へ介入しているような感覚をめざします。

田内泰生

担当教員より

ゲームの裏世界から発想を得たという田内の作品は、2つの異なる場所を複雑に繋ぎ合わせ、中継することによって垣間見える新たな空間の可能性を提示していた。
まず室内の展示場所には〈絵画・ビオトープを彷彿とさせる植物を配置させた多角形の水の張られた水槽・モニター(屋外の作品が映し出されている)など〉が配置され、屋外である校舎の裏には自転車、割れた鏡などといった周辺の環境を取り込みながら〈絵画・室内空間にある類型の水の張られた水槽・モニター(室内空間が映し出されている)など〉が展示されていた。室内にあるモニターには屋外に展示してある作品とその周辺が映り込んでいるのだが、その映像の中のモニターに映し出されているのは、室内空間で屋外の展示空間の映像を覗き込んでいる私であり、それは室内の展示作品を鑑賞している観客たちを捉えた監視カメラの映像なのである。観客は屋外にある作品をモニターで見ながらそれを見ようとしている屋内に居る自分たちの姿も見ることになるのである。またそれと同じく屋外のモニターには室内の展示作品を見ようとしている屋外に居る観客たちの姿が監視カメラで映し出されているのだ。
田内の絵画が描き出す世界、二箇所に置いてある類似形の水槽に映り込む周りの光景、モニターが映し出す内・外の風景、それらが混ざり合いながら作り出すイメージの世界を鑑賞していると、自分が何処にいて何を見ているのか分からなくなるような錯覚に陥る。それはリアルやイメージといった二元論の閉じた区分では解消出来ない空間の広がりと深さを経験するものであった。

油絵学科教授 丸山直文