江崎空悟

EZAKI Kugo

ONo.100 〜disir ilin〜

インスタレーション|建築木材、膠、顔料、寒冷紗
サイズ可変

作者より

本作品は5B号館204の通路側ロフトの鉄製のポールからロープによって吊るされていました。また作品の構造上、吊るしているロープを切り落とすと作品はバラバラになるため、卒業制作展期間終了とともに本作品は分割解体されています。本展での出品に際し、分割された内の5パーツを用い再構成しました。
本作品は複数の木製角材により縦3メートル横5メートルの二軸が十字状に組まれ、複数の寒冷紗が張られた絵画状の実体でした。2つの木材は複数の寒冷紗とロープにより交差状態が保たれ、これを“四辺を持ち木枠(額縁)と布地により構成される絵画”という形式と、“台座を持たない彫刻、つまりオブジェ”の間を取り持つ形式として想定します。
再構成にあたり絵画、彫刻についで建築の要素を入れることで空間を思考するような形をとります。

江崎空悟

担当教員より

巨大な《ONo.100 〜disir ilin〜》を中心にした江崎空悟の空間は鑑賞者を迷わせる。建築木材と寒冷紗で組まれた作品は絵画なのだろうか。それらは暴力的な作業の痕跡が刻まれており、ジャンクや彫刻のようにも見えるからだ。しかし注意深く見ると、そのピースの全てが一般的な絵画の構成要素を備えていることに気付かされる。組まれた木材と植物繊維の布地はキャンバスを意味する支持体であり、その表面に顔料とそれを定着させる膠で色彩が塗られ、組成的には広義の絵画であると納得させられる。
いまだ絵画、あるいは彫刻が屹立する前の状態を維持した物体は、定義を巧みに避け続けているようにもみえる。江崎の絵画を腑分けするような作業は、これから絵画の再定義に向かうのか、それとも否定に向かうのか。その思考が何処までたどり着けるものなのか興味は尽きない。

油絵学科教授 諏訪敦