仲村浩一

NAKAMURA Hirokazu

房総半島勝景奇覧
Spectacular view information in Boso Peninsula

千葉海岸線砂旅行
The journey while picking up sand along coastline in Chiba prefecture

キャンバス、アクリル絵具、砂
H2300 × W4860mm、H2300 × W4860mm

作者より

10歩ずつ足元の砂を採取しながら千葉県の砂浜を一周した《千葉海岸線砂旅行》と、その旅先で見た景色や土産、印象に残った物を描いた絵画作品である《房総半島勝景奇覧》が私の卒業制作です。
砂浜によって砂の色が違うということに興味を持ったことから砂の採取を始め、大学4年間をかけて千葉県の砂浜を一周しました。その活動が絵画作品の制作の動機となっており、20年以上暮らしている「千葉県」を砂と絵画作品の2つの側面から表現しようというのがテーマになっています。

仲村浩一

担当教員より

仲村は、入学した時から一貫して砂を使って絵を描いている。それも、故郷の千葉県の海岸線を歩きながら収集した砂なのである。なんでも、粘着テープを持って「十歩」歩いては、足元の砂をそのテープに貼り付け、集めていくのだそうだ。卒業制作展では、その痕跡を場所と日付と共に展示していて、なるほど砂は、場所によって色や大きさが異なり、その微妙な濃淡で埋め尽くされた「痕跡の壁」は、圧巻であった。
もう一枚の大作は、これも千葉にゆかりのあるものを題材に、真ん中に絵を描く自分を入れながら、よく見ると青木繁の《海の幸》が遠景にあったり、つげ義春の登場人物が描かれたり、はたまた鴨川シーワールドの魚がいたりと実に楽しい。彼は、採集した題材(主に写真)を大小にコラージュし、下図を完全に作った上で本画に移る。おそらく、砂が動かしにくい描画材だからであるが、これは、千葉にゆかりのある山下清の貼り絵の色紙も同じだろう。大切なのは、一気にイメージを描きあげる気合いとそれに続く忍耐なのだと、山下清の絵を見た時と同じ感動を、仲村の絵と行動を見て思うのである。

油絵学科教授 水上泰財