楢木マリア

NARAKI Maria

夜の星
yorunohoshi

キャンバス、油絵具
H3400 × W7000mm

作者より

夜、水平線の上にある星と星の間をたどると、星空を見つけることができた。
それは、全体像を観測出来ない、しあわせのようななにかに、似ている気がする。
空は眺めたまま歩けないから、道路のコンクリートや生えてる草の光沢、その時々の海の波を見たり感じたりして歩く。

そういう身近なものと一体になって、輪郭の定まっていない宇宙に星が産まれるよう、絵を描いて、なにかの身体が立ち上がることで、ここで生きているという勇気を持つのだと思う。

卒業制作は、青森の海辺を散歩した時の体験をもとに描いた。

楢木マリア

担当教員より

楢木マリアは、自身の体験を通して、その様子や印象をきっかけにして絵を描いている。卒業制作では、青森県立美術館で観た、シャガールがバレエの舞台背景として描いた「アレコ」の第一幕《月光のアレコとゼンフィラ》をきっかけに絵を描いた。作品の印象とその後に青森の街や海辺を歩いて見た風景の印象とが渾然一体となり、複雑な思いが巡ったという。それを表現するために彼女は、3.4×7mというこれまでで最大の画面を選んだ。
青を基調とした、夜景を思わせる画面の中央に星がふたつ輝いている。その星を取り囲むように、勢いのある形が舞うようにうねっている。実際に見たものと記憶とが入り混じり、それらが色と形となって同一画面に定着される。画面の中で秩序が入れ替わり、楢木が感じたリアルが絵として立ちあらわれてくる。
大きい絵を描く理由を楢木は、空や星など「描きたいものが遠くにある」からだと言っている。大画面に向かって身の丈いっぱいに筆を動かす様は、どれだけ手を伸ばしても届くはずのない星を、なんとかして掴もうとしているようにも感じる。星は宇宙であり、光であり、彼女自身である。それを掌中に収めることはできないとしても、その存在は絵を描き続けることで感じることができるのだと思う。

油絵学科教授 小林孝亘