國本菫

Kunimoto Sumire

間の画家 月岡耕漁
Artist of HAZAMA
Kogyo Tsukioka

年表、本|紙
Chronology, book|Paper
H1456 × W4120mm、H297 × W420mm ×2点

作者より

生活や文化が絶えず変化し流動する明治時代に生きた月岡耕漁。彼は能楽を題材とした絵画【能画】というジャンルの作品を残しているが、その画業の時代との関係、能画以外の作品に着目した研究は今日まで殆どされてこなかった。今まで語られる事なく忘れ去られていたが、紛れもなく重要な日本芸術界の間の画家である。意味、関係性、価値を新たに発見する為、事実を年表で俯瞰し、自らの言葉で思考し作り上げた本を纏めて形とする試みである。

國本菫

担当教員より

今回の卒業制作において國本さんは「月岡耕魚」という忘れられた作家を発見したと言っても過言ではない。そう言いたくなるほどこの明治2年生まれの画家に関する情報、研究は皆無と言って良いほどであった。唯一彼の名が歴史に刻まれているのは『能楽図絵』という美しい木版の能画集であった。彼女が2年がかりで作り上げた耕魚の年表には能画のみではなく、日本で最初のグラフ・マガジン『風俗画報』への寄稿も加えられ耕魚の全貌が明らかになった。そこに社会の諸事象や同時代画家などを布置、俯瞰することで、単なる個人作家の探求に止まらず今後私たちが探求すべき19世紀後半から20世紀前半の埋もれた日本のグラフィックデザイン史が浮かび上がってきたのである。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策