茂木美桜

Motegi Mio

水仙月の四日
The Fourth of the Narcissus Month

絵本|紙、パネル、アクリル絵具、銀粉、漆
Picture book|Paper, acrylic paint, silver powder, urushi
H300 × W300mm

作者より

「水仙月の四日」は、宮沢賢治が書いた童話である。宮沢賢治の作品には、目には見えない存在、風や雪などの自然現象を擬人化することにより、彼らの声を描いた童話がある。雪をテーマとしたこの作品も、その中の一つだ。
岩手県の四月の景色、美しく磨き上げられたような群青の空、そして時に荒々しくその表情を見せる雪童子達。
文章の中に込められた風景を想いながら、私はこの物語をもとに1冊の絵本を制作した。

茂木美桜

担当教員より

茂木さんはこれまでも何度か宮沢賢治の童話に基づいて絵本を制作してきた。彼女は取材のため花巻に幾度も通い、硬質で説明を排した、必ずしもわかりやすいとは言えない賢治の文章を深く読み込んできた。その上で言葉とイメージを衝突させ、単なる説明や挿絵ではない対等な関係まで作り上げてきた。それがこの絵本の持つ、静けさと荒々しさというコントラスト、雪童子の繊細な感情の変化、ダイナミックな時間経過の描写など、全体の構成の素晴らしい緊張感の所以である。また彼女が最も力を注いだのは輝く群青の空色と水仙月の4月を象徴する千変万化する雪の白さであり、それは素晴らしい効果を上げている。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策