佐々木彩

Sasaki Aya

書の空間とTypography
Space of writing and Typography

巻物、本|和紙、針金
Scroll, book|Washi, wire
H340 × W13560mm、H340 × W760mm、H340 × W340mm

作者より

カラーコントロールによって、紙面の中での奥行きが生まれることをタイポグラフィ的視点としたとき、それは印刷物だけでなく、筆によって記された書にも言える。筆文字の特徴として、文全体はもちろん一字一字の中にも強弱がある。今回は光悦筆だろうと言われる「鶴図下絵和歌巻」の文字を使用し、奥行きの広がりがどのように在るのかを立体で表現した。奥行きの表現の基準には、私自身が視覚調整した10段階の明度を使用している。この作品で、ただ文字が連なったように見える書がどんな奥行きを持っているのかを感じてもらいたい。

佐々木彩

担当教員より

優れた書の空間感を読み解き、その美の有り様を実際の三次元空間に置き換えることを試みた作品だ。和歌を主題に揮毫された書の空間は、筆圧や墨付きなど瞬時の感覚によって画面全体が構成される。この空間は二次元的な空間美で終わらず三次元的な奥行きの美しさを持っている。この空間美を佐々木さんは、文字を平面から切り離す事で表現しようとした。自らの視感覚を鍛える為のスタディを同時に行いながら鶴下絵から文字を切り出し、三次元の空間に再構成していった。無謀ともとれる卒業制作だが、言葉では説明しきれない書の空間美を、鍛あげた視感覚と忍耐力によって視覚化を試みた斬新な作品である。

視覚伝達デザイン学科教授 新島実