後藤二子

GOTO Niko

味わう模様
Savor the stain

封筒、インクジェットプリント、古着、木材
各H1800 × W450mm(7点)

作者より

《不完全な人間を味わうこと》を目的として行ったプロジェクトの記録。協力者に仰向けでの食事を依頼、通常社会に嫌われる食事中の食べこぼしを誘発させ、その様子や跡が残った衣服などを集めシミを広げた上で展示した。食べる瞬間から展示するまでの一連の流れ全てが、他人の未熟に触れ受け入れていく過程であると同時に、それが大切に保管されるべき行為である事を示している。不完全を許し粗を面白がるくらいの余裕を持って毎日を味わいたい。

後藤二子

担当教員より

人は暮らしの中で思わぬ失敗をしてしまいます。食べこぼしの染みが残ってしまった服は捨てるしか方法は無いのでしょうか、ところがそれを廃棄せず逆手にとって可愛い作品にアップサイクルしてしまうのが流石、美大生というありがちな作品に留まるものではありません。
出会いが制限されるコロナ禍でネットを通じた会話で満足出来る人は多くはないでしょう。その状況に甘んじる事しか出来ない自分の無力感や不満を作品に表す人もいるでしょう。後藤の表現は学びの集大成という完結した造形物に留まらず現状を凝固させず関係を繋げる運動体と受けとれます。身近な人や海外にいる友人又、その関係者に特定のお願いをし、その行為の回収と連鎖をドキュメントします。「寝ながら食事をしてその様子の写真と食べこぼしの付いた衣服を送って下さい」というスコアを提示します。それは、1960年代に起こった芸術運動フルクサスの再活用とも受け取れます。それはベトナム戦争への批判とそれを止められない芸術の無力を無意味で時に深刻に時にユーモラスに連帯しようとする思想も背景にあったと思います。コロナ禍の日本政府は最初にコロナとの戦争だと語り、しばらくするとコロナとの共生だと言い出しました。この類似した状況のハックとして食べこぼし時の顔写真や輸送に使われた封書のアーカイブは集大成という完結を乗り越え広く公開、連鎖されるべきでしょう。

空間演出デザイン学科教授 津村耕佑