上田さつき

UEDA Satsuki

SNS:スペクタクルな日常
Social media:daily life of spectacle

木材、紙、アクリル塗料、家具、ほか
インスタレーション|H2300 × W4000 × D6000mm
本|H515 × W364mm(74ページ)

作者より

人はなぜ日常を見せるのか。
現代の人びとは『見せる』ために、
現実を少しばかり過剰に見せていないだろうか。
今一度、我々はSNSの見せもの化について思考し、付き合い方を再確認すべきだと考えた。
そこで、SNS(見せている生活)と
現実(見せたくない生活)を
同時に確認できる仕組みを作った。
見せものは見せものとして、現実は現実として、
分別し再確認してほしい想いを視覚化した。
この作品では、SNS=スペクタクル(見せもの)の私なりの概念を空間として象徴的に提示する。

上田さつき

担当教員より

本作はスリッド状の鏡を挟んで乱雑に物が置かれた部屋と、同じ物が白く塗られた部屋で構成されている。鏡の前に立つとあちらとこちらの物が繋がって見え、虚像と実像の判断がつかない錯覚が起きる。この部屋はSNSを通じて虚実が曖昧になっていく作者自身の体験を象徴的に表した空間であると同時に、SNSに慣れ親しんでいる現代の人々に対する問いかけでもある。「スペクタクル」「シミュラークル」という現代思想の概念から着想を得て、個人の経験が社会へ向けた言説へと展開していく思考過程を綴った書物も含めて、今日的なメディアに対する新たな批評の形とも言えるだろう。SNS特有の現象を鏡による錯視効果に置き換えた発想力やそれを実現する造形力など、作者の“形にする力”が遺憾無く発揮された作品である。

視覚伝達デザイン学科教授 中野豪雄