木内晶文

KIUCHI Aki

私にとっての森 —快さの姿—
Forest for me -appearance of pleasure-

紙、アクリルガッシュ
平面|各H170 × W170mm(4点)、各H190 × W190mm(36点)
本|H170 × W170mm(276ページ)、H297 × W210mm(80ページ)

作者より

私はいつも森に惹かれる。私にとって森は、ぼうっとそこに居るだけで快さを感じられる所である。ただそこに居て受動的な態度で知覚情報を受け取ることに快さを感じるのだ。そんな快さの姿を捉えたいと思った。
この作品は私にとっての快さについて、明瞭な解釈とその造形を探ったことの記録である。快さの解釈において私は「安心感と開放感」「静と動」という言葉に辿り着いた。そして快さに繋がる造形的な要素を探るため、自分の感覚が捉えた現象を言葉から形に立ち上げるスタディを行なった。

木内晶文

担当教員より

本作は、自身が心地よいと感じる森の中での感覚を形にするために、その体験を言語化することから始まった。数ヶ月におよぶ言語化の結果として得られたのは「色」「形」「動き」の3つの言葉であった。この一般的な言葉が直接、作品になる印象はないが、作者はまず、色、形、動きを感じる最小限の要素として、厳密にコントロールした1本のグラデーションを制作した。そして、言語化のプロセスから得た思考をもとに、段階的な造形操作をグラデーションに加えることで、森の中での自身の感覚を再現していった。
着実な制作プロセスと、手作業による厳密な色彩コントロールから生まれた造形は、シンプルだが力強く、視覚が持つ原初的な意味の探求と言えるものである。

視覚伝達デザイン学科准教授 石塚英樹