池田樹

IKEDA Itsuki

手話 ─視覚言語の世界を旅する─
Sign Language: Travel through the world of languages with your eyes

本|紙
各H260 × W260mm(98ページ、50ページ、68ページ)

作者より

本書は、私が視覚言語である手話と出会って、手話についてのリサーチや手話を使う人々との交流から学んだことを、「システム」「多様性」「社会」の3つの視点からまとめたものである。
手話には視覚言語ならではの豊かな世界があり、言葉には話者の文化や視点が表れている。
こうした発見をふまえて、「社会における障害とは何か」という問いを投げかけ、視覚的なコミュニケーションについて考えるきっかけになる作品を目指した。

池田樹

担当教員より

本作はろう者とそのコミュニティへの関係作りから始まり、先行研究も含めた膨大な調査を通じて、手話が音声言語の代替えではなく自律した言語であることを3冊の書物によって豊富な図解と共に編集されたものである。「System」では様々な振る舞いを微細に連携させ、言葉の差異やニュアンスを伝える高度な視覚言語であること、「Diversity」では国、地方、コミュニティ、年齢によって扱う手話が異なるだけでなく、ろう者と聴者の間で生じる文化的な差異とそれによって生じる歪みに至るまで、そして「Society」では「障害」とは何か、言語とは何か、それを取り巻く社会のあり方とはどうあるべきかについて語られている。本作には作者が調査・制作のなかで経験した感動と驚きの連続、それが今日の社会問題にまで通底していることへの切実さがある。聴者の身近にあって見えていなかった「ことば」と「人」と「コミュニケーション」。それを見ようとすることこそ、作者が最も伝えたかったメッセージなのである。

視覚伝達デザイン学科教授 中野豪雄