小澤拓生

OZAWA Hiroki

無主物の終点
The terminus of things without owners

インスタレーション|廃材(木材、竹、金属、タイヤ、ほか)
サイズ可変

作者より

無主物とは法律の場で主に使われる言葉であり、誰の所有にも属さない物を意味している。この無主物という言葉は主に過去に誰かの所有物であった廃棄物に使われることが多いが、他に誰の所有物でもないモノである空気、水、植物といった自然環境にも使われる。誰かによって棄てられ、誰の物でもなくなった廃棄物と元来誰の物でもなく、誰の物でもある自然環境が同じ言葉で表されるのであれば同じように大切に扱うことは出来ないだろうか。この空間は日本独自のアニミズム(自然崇拝)思想である神道を元に構成した。様々な無主物達が共存、融合し、椅子というモノとしてある種の神として新たに魂を宿す。ここは無主物達が人が座るという行為を通してひと時の間だけ主を支えるモノとして生まれ変わる場所となる。

小澤拓生

担当教員より

人は多くの物を消費して生きている。
要らなくなったモノ(無主物)のなかには、まだもう少し、まだまだ使える素材が眠っている。培ってきたデザインの力とモノに対する愛しみが合わさって、これらの「椅子」に再生された。椅子は、見て、触れて、座ることで、直接対話する家具だから、無主物の以前の姿を想像したり、経過した時間の痕跡に我を振り返り、懐かしむかもしれない。永く付き合うことを考えるのは愉しいことなのだ。

空間演出デザイン学科教授 五十嵐久枝