伊藤有沙

ITO Arisa

つるがしま物語―地域の持つ潜在的独自性の可視化―
The story of Tsurugashima


パネル|H728 × W1030mm(10枚)
絵本|H257 × W182mm(10冊)
本|H287 × W210mm

作者より

この作品は、現代の鶴ヶ島を構成する10万年の歴史を遡り、この地に紡がれてきた人々の暮らしや想い、文化や歴史などを都市の変遷や社会的変化と共に可視化したものです。様々なモノが重なることで初めて「地域」は形成され、そしてそれはこの先も続きます。
鶴ヶ島が歩んできた唯一無二の歴史を知ることで、私たちの未来について主体的に考えること、また、全ての地域がその土地ならではの独自性を持つという事に気付くきっかけとすることを目指しました。

伊藤有沙

担当教員より

「何も無いけど良い町」。作者が生まれ育った鶴ヶ島市で暮らす人々の認識への疑問が本作の制作動機である。作者はその大地が形成された10万年前の旧石器時代から現在の鶴ヶ島市に至るまで、様々な分野を横断したリサーチと住民たちへのインタビューを束ねた200頁の書物を完成させる。そして、この歴史が積み上げた時間の層を、10点の巨大なイラストレーションへと展開し、それぞれに対応した絵本も制作した。そこでは人々の暮らしと様々な想いが織りなすことによって地域が成り立っていることを伝えている。「何も無い」のではなく「全てがある」ことへ意識を傾けること。それが地域の未来のあるべき姿を思考し議論するきっかけになるのではないか。本作が伝えているこの問いは、鶴ヶ島市だけでなく私たちが住まう全ての地域に共通する問いである。

視覚伝達デザイン学科教授 中野豪雄