川上毅大

KAWAKAMI Takehiro

日本独自の風刺精神
The uniquely Japanese spirit of satire

本|H257 × W182mm
パネル|H420 × W297mm
年表|H1110 × W3364mm

作者より

江戸後期から幕末にかけて、政治への不満や社会不安の高まりを背景に、風刺画が描かれた。厳しい出版規制のもと、政治メッセージを隠し、庶民がそれを読み解くという日本独自の風刺が発達した。庶民の高い教養と成熟した多色刷り木版画の技術があって成立した風刺文化である。本作は、この風刺コミュニケーションの仕組みを分析し、庶民の感情や関心が反映された風刺画を通して、教科書では語られない江戸社会の姿を視覚化する。

川上毅大

担当教員より

市民社会の勃興とともに生まれた英仏両国の先駆的な風刺画研究を踏まえ、作者は江戸の風刺画を日本独自の風刺精神の源泉として位置づけるに至った。江戸時代末期、幕府体制は外圧、経済格差、災害によって動揺し、その不安定な社会状況の中で風刺錦絵は大きく発展した。背景には、印刷技術の進歩と庶民層の高い識字率があった。作者は、政治的抑圧に対抗する中で編み出された高度な視覚表現を分類・体系化し、「文法」として提示する。さらに、それらを歴史軸に沿って編集することで、時代精神を鮮やかに示している。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策