古舘壮真

Furutate Sohma

HOW TO SEE, HOW TO RECOGNIZE
MASS
FLOAT LIGHT

鉄板
Metal
H1750 × W460 × D460mm(shelf)
H500 × W630 × D300mm(stool)
H600 × W1200 × D300mm(立体モデル)
H450 × W500 × D100mm(花器)
H950 × W500 × D80mm(short)
H1050 × W600 × D100mm(long)

作者より

人間は物の存在を感覚によって直接知るのではなく、自らの経験や知識などのデータを無意識に使い、自分の判断を見た物に介入させることで、それが何であるかを認識している。 そのような経緯で認識される物質の要素は二種類に分けられ、一つは形・位置・運動等の空間的な広がりの特徴。もう一つは色・音・香・味など感覚的な性質と呼ばれる特徴である。 そして、モノの本質を構成するのは空間的な広がりであり、感覚的な性質はモノの本質を構成するものではない。
私は、デザインの実践的な場である物質・物体(形・位置・運動等の空間的広がりの特徴)と、思考のツールである経験や知識との間の関係を観察し、それらが接するときの違和や齟齬からデザインの課題を探った。 これらは、認識に先立ち感覚で捉える行為を促すことを目的としたインテリアエレメンツである。
「MASS」は、物質の基本的な情報である要素形”から、認識というテーマに対しての最も明快で直接的なアプローチを試みた。3DCGソフトウェアでのモデリング機能の構成要素は、厚みのない面で構成された、質量の無い「0」のオブジェクトである。そのオブジェクト同士が交わったり、突き出たり、それによって穴が開いたりする非現実的な現象・形を抽出し、私たちの住む現実の世界、3次元空間への表現を試みた。存在し難くも用途や形からではなく、要素が先立って認識できるオブジェクトを目指した。

古舘壮真

担当教員より

立体造形をPC上で行う際に使用する3D-CADソフトウェアを使うデザイナーが誰しも目にして違和感と興味を持つ、厚みゼロの物体の重なりを原寸大のプロダクトとして大胆に表現した。魅力あふれる違和感を有した形態は周囲の空気を見事に取り込み、その独自の世界観は見る物を魅了する。作者は物の認識の仕方をテーマとして、一見現存しえないと思われた形態を実現させ既成概念に揺らぎを与える事に成功しており、ここにこの作品の生命がある。研究調査、完成度、あらゆる面で非常に完成度が高い作品である。

工芸工業デザイン学科教授 山中一宏