松下陽亮

Matsushita Yosuke

Mould

メラミンスポンジ、ポリエステル樹脂
Melamine sponge, polyester resin
H1100 × W625 × D400mm H600 × W1250 × D400mm H500 × W400 × D400mm H400 × W400 × D400mm

作者より

我々が日常的に使うプロダクトの多くは、見た目や機能が大衆を対象にして最適化された均質な物である。現代化と産業化によって生み出された「均質性」に慣れることで好奇心や人間性さえ薄れ、我々と物や空間との関係性をより表面的にしている。
「Mould」は、大きなメラミンスポンジに直径10mmほどの通し穴を空け、そこに流し込んだレジンがスポンジの浸透と重力により成形され、掘り出すことで姿が現れる。
使用者自らが手を加え、均質ではないが原体験的なストーリーとその痕跡を物に宿らせるというプロセスを含むことでプロダクトの新しい価値や在り方、物としての多様性を見つけることができると考えた。消費者として日常的にある物にただ接するのではなく、その物を通して、人々がそれぞれの多様なストーリーや価値観を持つきっかけとなることで社会において人と物の関係性をより密にすることができるのではないだろうか。

松下陽亮

担当教員より

新素材の開発研究から生まれたプロダクトである。スポンジの塊に部分的に樹脂を含侵させ、硬化後に掘り出すと機能を持たせた家具が出現する。型取りの発想を逆手に取った全く新しい工法による家具・プロダクトの制作方法、非常にユニークなコンセプトが高く評価された。自然環境に配慮し、人工樹脂以外の松脂など自然に還る素材を使って行っていた数えきれないほどの実験のプロセスも今後のこの製作コンセプトの展開に大きな期待を持たせる。様々な可能性を秘めた作品である。

工芸工業デザイン学科教授 山中一宏