吉野祥穂子

Yoshino Sahoko

白の光、空間、グラデーション、そして網点
The White Lights, Spaces, Gradations, and Dots

シルクスクリーン|紙、インク
Silkscreen printing | Paper, ink
H297 × W210mm H320 × W440mm H841 × W594mm H850 × W710mm H1030 × W728mm ほか

作者より

シルクスクリーン印刷における仕上がりの平滑さや均一かつ鮮やかな色面、近づくとインキの重なりによる微細な段差が見え、それらが私を魅了した。大量印刷が可能な現在、版画の価値は「見た目の美しさ」「人の手による味わい」、そして「作品の強さ」の3点にあると言える。自ら制約を設け、一つの版さえあれば色や重ね方を変えることで豊かな平面を作ることができるという可能性を模索した。そして私は、網点で表されたグラデーションの印刷を通して、空間を知覚し表現できること、それは光を知覚し表現することと同義であることを発見する。

吉野祥穂子

担当教員より

インキの調整など大変な労力を要するシルクスクリーン印刷によって得られる仕上がりの平滑さ、鮮やかな色彩、物質的なインキの厚みによる重なりの質感などに魅了されたところから彼女の制作と実験は始まった。まず孔版印刷の特性を探る様々なバリエーション実験が前期に行われた。それらを踏まえながら彼女は光の現象をとらえるために白をテーマに紙の白とインキによる白の表現を執拗に試みた。次にサイズの異なる網点の重ね刷りなどによって生じるパターンを用い、見る距離によって変化する微妙で繊細なグラデーションの表現を試みている。ミニマルな作業を徹底することで浮かび上がる、豊かな色彩経験の素晴らしいドキュメントとなった。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策