佐藤駿太郎

SATO Shuntaro

EMBRYO —還るためのモビリティ—
EMBRYO – Mobility to return –

プレゼンテーション|透明レジン、PLA樹脂、アクリル|3Dプリント
Presentation | Resin, PLA resin, acrylic board | 3D printing
モデル|H328 × W658 × D332mm
パネル|H876 × W1700mm

作者より

還りたくなった。
寝室にはやわらかい穴があり、その向こうは部屋の空気漂う外だった。
そこはほんのわずかな重力しかない、外にある自分の空間。
私は薄い膜と空気を纏い、静かに動き出した。

2050年、プライベート空間の中での仮想現実でしか世界を知ることがない世の中になる。その中で、人間の根底にある世界を皮膚感覚で感じたいという欲求が大きくなる。EMBRYOはプライベート空間と直接繋がることで、外への抵抗となっていた身支度などの儀式を取り払い、人々の行動のモチベーションそのものになる。
ありのまま、外に出る。膜の中は寝室の空気そのもの。自然という母体に包まれ、自らが胚に還ることで、人間は生を感じるだろう。

佐藤駿太郎

担当教員より

「少しまどろみ始めた時、ふと海に行きたくなった…寝室の一角から身を滑り込ませ、気がつくと海辺に着いていた。」その様な情景を想像させる、空間と空間をシームレスにつなぐモビリティである。
身なりを整え、気構え、操作しなければならない現在のモビリティとは異なり、もはや様々な操作を必要としない。ペルソナを包んでいる衣はその人の住まう空間の延長であり、くつろいでいる姿のまま、思うときに行きたいところへ移動できる。
現在のモビリティを超え純化された姿は、一見、エキセントリックであり、この様なたぐいのコンセプトはこれまで無かったが、現実に進んでいる技術革新で実現可能であり、将来の概念を示唆する秀逸な作品である。

工芸工業デザイン学科教授 稲田真一