吉原千晶

YOSHIHARA Chiaki

Seam of skin

スタイロフォーム、ラーチ合板
Styrofoam, larch plywood
H400 × W45 × D450mm、H420 × W310 × D310mm ×2点、H660 × W515 × D320mm
動画:武蔵野美術大学大学院造形構想研究科映像・写真コース
2年 矼 由之輔

作者より

私たちが過ごすすべての空間は、物や素材の集積によって構成されている。素材一つにしても、その物の存在は生活環境や人々に大きく作用することがある。断熱材や、緩衝材として知られるスタイロフォームは耐水性があり、軽く丈夫であり、容易に加工することができる。今回、その素材が持つ特有の性質に合わせて、それぞれの機能を持った家具を制作した。
「Seam of skin」は、スタイロフォームに、硝化綿ラッカー塗装を施してプレスすることで同素材を溶着させる。そうして積層した材の切断面にはスタイロフォームの地と塗料の色が交互に露出し、木目のようなテクスチャが生成する。
あらゆる素材や製品が持つ視覚的、触覚的な表情、性質を見極め、本来の使用用途とは別のものとして扱うことから生まれたこの擬似的な木目のテクスチャは、物で構成される空間のなかに新たな価値を打ち付ける。

吉原千晶

担当教員より

通常表面には出して使用することのない断熱材を素材として研究し、数えきれないほどの実験をくり返す中で生まれた作品である。薄くスライスした素材を積層しそれを再びスライスして表出してくる木目のような表情は、極めて人工的な素材ながらも、自然素材のような面立ちで、製材の位置やタイミングで異なるテクスチャを生む。この発明的なプロセスとデザインへの展開を高く評価したい。家具の座面として使用している部分は、この素材独自の柔軟性で使用する中で押しつぶされ、新たな表情を見せることだろう。素材のさまざまな可能性を秘めた作品として、さらなる発展・展開に期待したい。

工芸工業デザイン学科教授 山中一宏