坂上桜月

SAKAGAMI Satsuki

深息

インスタレーション|実家のカーテン、紙
サイズ可変

作者より

小さい頃、カーテンの中からよく窓の外を眺めていたこと。高校生の頃に出会った、アンドリュー・ワイエスの風を描いた絵画。大きな窓と大きな本棚のある図書館テラスに来ると、そういった私の記憶の層がひらひらとめくれて呼び起こされる。
この空間から感じた記憶のレイヤーを表出させるために、私が幼い頃からずっと使っていたカーテンをほどき、一本の糸にしたものをこの空間に再び編み出すことにした。

坂上桜月

担当教員より

幼少期、居心地いいパーソナル空間は「窓とカーテンの隙間」だったという作者は、編み物にこの上ない愛情を持ち10年近く編み続けている。自身にとって「編むことは呼吸」に等しいという。
この卒業制作では、半屋外である図書館テラス空間に何を編むのか検討し続けた。10年近く自室に吊り下げられたままだった「色褪せたカーテン」を布から解いた糸一本一本で「結び繋いだ糸」を粗めに編んでみる。それまで試したものとは異なる劣化した糸が心配されたが、時の経過による馴染みがテラス空間の中で呼吸のように流れ、大きくゆだねる動きが現れた。風であり、空気であり、波のように、ほこりさえも空間の要素に見えていた。
漫画ストーリーブックも色褪せたカーテンで綴じられている。

空間演出デザイン学科教授 五十嵐久枝