澤木識顕

SAWAKI Noriaki

去来
kyorai

平明
heimei

雲肌麻紙、岩絵具、墨、水干絵具
H1303 × W1620mm、H1620 × W1303mm

作者より

東京都江戸川区の善養寺にある「影向(ようごう)のマツ」と呼ばれる、推定樹齢600年余の国指定天然記念物のクロマツをモチーフとした。
聖なるものを求める思いを持ち続けても世俗に埋もれて成就されないが、それを求め続ける姿それ自体が、自己の求めている生きる姿であると受け入れざるをえない。
この気づきの刹那は、数百年の風雪に耐えて現存するクロマツの姿形と、符牒を合わせて均衡することができただろうか。

澤木識顕

担当教員より

樹木のフォルムや木肌は独特な捉え方で描かれ、背景はどんよりとした色合いにすることでこの作品は成り立っている。このどんよりとした色合いが絵の深さに繋がり、歪んだ月もその演出の手助けとなり鑑賞する者に何かしらを伝える。日本画絵具は水の力を借りることで思わぬ効果を生む。他力本願的な要素も含むが、それが特徴とも言える絵具である。それを利用しながら思うままに作品に生かせたことは評価にも繋がっている。

造形学部 通信教育課程 教授 重政啓治