長尾のり子（長尾則子）

作者より

私は植物が好きだ。光の方へ伸びゆく力、踏まれても、なお頭をもたげる内在する生命力などが、植物の外観の美しさや脆弱さと共に、私に強い印象を与える。この作品の木は、ほぼ朽ちて見える。しかし、内部ではまだ生きようとする力が燃えている。その力を描きたいと思った。
願わくばこの身よ植物性と変われ

長尾のり子

担当教員より

描くきっかけは数枚の写真だった。それらには樹齢を重ねた木々が大地に根を張り、空高く枝を捧げている。また中には苔むしているものさえある。時に自然の生命力は脅威であり畏敬の念も禁じ得ない。殊更、自身が弱っている時にはその思いを強くするものである。作者は自身の画面と向き合うと同時に主題としてこれらの樹木を選んだ。それらより生きる強さを感じた作者はその感動を観察することから始めた。描写と色彩のどちらを優先すべきか自問自答をしながら制作は続けられた。そして絵筆の積み重ねの中から個性的な色彩を画面に織り込めたように思う。

造形学部 通信教育課程 教授　吉川民仁