永井真名

NAGAI Mana

奄美・沖縄における女性祭司装束の造形的特徴に関する研究
―ハブラドギンの造形と信仰的意図の関係性についての一考察―

論文|54ページ(34,271字)

作者より

本研究では、奄美・沖縄の女性祭司であるノロが、かつて着用していた「ハブラドギン」と呼ばれる胴衣の造形的特徴に着目し、作り手がデザインに込めた信仰的意図について調査・考察した。
ハブラドギンの所蔵館を訪れて一次資料を観察し、テクスチャや継ぎの構造などを分析した結果、直角二等辺三角形の端切れ布をパッチワークのように継いだ文様において、視覚的動きをもたせるという共通性がある一方、布の種類や継ぎの構造に個体差があることが分かった。
結論として、三角意匠の端切れ布はノロの霊的な力の形象化であり、オリジナリティを持って布を継ぎ合わせることで、先代ノロから霊力を継承し、祭祀において結界としてまとうという意味が込められているのではないかと考察した。また、その幾何学模様に、ノロたちが信仰する他界思想が投影されている可能性についても推論を試みた。

永井真名

担当教員より

ノロ(祝女)の装束意匠に着目し、展示資料の丁寧な観察・調査を通して、装束に込められた作り手の信仰的意図を探った意欲作。端切れ布の色やテクスチャ、三角意匠の数、継ぎの構造や縫製の方法など、本コースでの学びでつちかった能力を活かした造形観察が行われている。布の選択や配置のパターン、仕立て方などに個体差が見られることや、三角意匠の回転をも伴う動きへの気づきを通して、信仰的意図の新たな見方を提示している。

造形学部 通信教育課程 教授 田村裕