菅原素子

SUGAHARA Motoko

晩秋 Ⅰ

晩秋 Ⅱ

パネル、楮紙、絵絹、水干絵具、岩絵具、銀箔、墨、金泥、ほか
H1455 × W1120mm
H1740 × W1180mm

作者より

課題Ⅵから対象物の「形象化」が求められた。「コロナ禍」もあったと思うし「老い」もそう、常に心を占めている哀しさ、理不尽、無常観を形象化する、それを課題Ⅵから卒業制作まで連なりを追って現わそうと決めた。人物に植物を必ず添えたのは、季節で芽吹き花を咲かせ実を結び、枯れる、過ぎる時間が人と対をなすため。右から左へ行く時間の流れが日本の絵の約束で、左端に当たる卒制の女性は歩き疲れて腰を下ろしている。足は左(未来)を向くが、来た方の右(過去)を振り返って見ている。展示されていないが、包み込むように寄り添う椿の樹が目線の先に立っている、足元にずいぶんの花を落としながら。黄金色のたそがれに染まりながら左にはまだ道は続く。

菅原素子

担当教員より

絹は日本画ではよく用いられる基底材である。絵絹に描く際には裏彩色という画面の裏側に着彩し、絵具自体の色は絹地を重ね加えたものとして表面から見せる技法がある。この作品はそれをさらに応用し、着彩した紙の地と絵絹との間に隙間を作り浮かす手法で裏彩色とは違う役割を作り画面全体を引き立てるものになっている。絹そのものに描かれた人物の表情とそれを補足する演出効果が作品を引き立たせた手法が評価された。

造形学部 通信教育課程 油絵学科教授(日本画コース) 重政啓治