岩﨑真明

IWAZAKI Masaaki

円空研究における昭和戦後期から平成期までの着眼点の変遷
—作品と技法から作者の人物像・思想へ—

論文|65ページ(27,327字)

作者より

昭和戦後期から平成期までの円空研究の着眼点の変遷について、研究家と展覧会を対象として考察をおこなった。
昭和戦後期には、日本美術史で位置付けられていなかった円空作品の造形の独自性や技法、新発見の円空作品という着眼点が認められた。平成期には、円空の人物像や、内面的動機、造像思想への着眼点が増えた。昭和戦後期から円空作品やその技法に対する着眼点が、円空自身の人物像や思想に対する着眼点に移行してきたと考えられる。
さらに考察可能な着眼点を提示する。生涯最後の作品や種類には、円空の明確な意図があったはずであるが、最後の造像という着眼点での考察が少ない。関連して、円空が自ら望んで造像した作品の種類には、円空の何らかの意図や動機が強く反映されていると推測されるが、そうした着眼点での先行研究がない。また円空作品にあらわれた特徴を「円空彫(り)」と表現することがあるが、これに関する研究や論考を探すことができなかった。これらの着眼点からの考察は有意義だと考える。

岩﨑真明

担当教員より

江戸初期の僧で数多くの木彫仏を造像した円空が現代においてどのように扱われてきたか、研究史と展覧会史を点検し、昭和戦後期と平成期とを対比しながら論じた研究。円空受容については日本美術史学の形成や変容と絡めた先行研究が既にあるが、著者は個々の研究や展覧会が円空とその作品のどこに着眼したかに焦点を当てることで、今後の円空研究に向けた課題検討につなげている点を、着実かつ丁寧な作業ぶりと併せ高く評価した。

造形学部 通信教育課程 芸術文化学科教授(造形研究コース)
金子伸二