渡邉雅子

WATANABE Masako

溢れる
afureru

君を探し空を見上げる
Kimiwo sagashi sorawo miageru

シナベニア木製パネル、油絵具
H1620 × W1303mm、H1620 × W1303mm

作者より

《溢れる》
私は泣かないと決めていた。
涙がこぼれないように、
心がこぼれ落ちないように
息を止め、
拳を強く握りしめていた。

ある日、絵の中の私が泣いていた。
涙が溢れていた。
それを見て、
私の目からも涙が溢れ、
声を出して泣いた。

《君を探し空を見上げる》
空を見上げる癖がついた。
それは決まって曇り空の日や、
夜になる直前の時間。

君に会いたくて、
君がいるような気がして、 
君の声が聞きたくて、
今日も空を見上げる。

渡邉雅子

担当教員より

自画像を描くことは特別珍しくないが、作者にとっては特別になった。作者は自分の表面的なものをただ見ているのではなく、描くことを通して内面までを深く見つめ直すことができた。そのことで表現としての説得力を強くした。内に秘めた悲しみは、自身の外側に希望を見出す変化をもたらしたようだ。大理石の中に固く閉じ込められていた感情が風の動きを満たした空間に徐々に解き放たれた。見ることと描くことが一体となった時、作者自身が望んだ本来の自分の姿を画面に見出し作品に投影させたのだと感じる。

造形学部 通信教育課程 教授 吉川民仁