新井雛

ARAI Hina

映画『アラバマ物語』の主人公描写における対の[弁護士/父親]描写とその二重性
映像表現に見るフィンチの変化とmockingbirdの生死

論文|45ページ(25,629字)

作者より

本研究では、米製作映画『アラバマ物語』における主人公描写を映像表現から分析した。主人公は三幕構成に従って変化しながら描かれるという映像作品に特徴的な点に着目し、主人公の劇中での描かれ方とその変化についてプロット毎に分析を行った。映像分析を経て、本作での主人公描写にはプロット毎に差異があり、二重性をもって描写されている点を確認した。本研究では最終的に、『アラバマ物語』の主人公は弁護士描写と父親描写との二重性をもって描かれているという結論を提示した。

新井雛

担当教員より

映画《アラバマ物語》は人種差別を批判的に描いた法廷ドラマとして評価されているが、著者は映像分析によって、主人公フィンチの描写を軸とした作品構造の探究に取り組んだ。画面上の「左/右」に展開上の「プラス/マイナス」、「昼と夜(明と暗)」が重ねられ、映像表現の重層性が解明されている。公(弁護士)よりも私(父親・人間)の在り方が最終的に大切だという含意が本作品の魅力でもあることに、あらためて気づかされる。

造形学部 通信教育課程 教授 金子伸二