石川順子

ISHIKAWA Junko

Life

Life - Ⅰ
Life - Ⅱ
Life - Ⅲ
Life - Ⅳ
Life - Ⅴ

紙、リトグラフ
H820 × W570mm、H820 × W570mm、H820 × W570mm、H555 × W615mm、H555 × W620mm

作者より

 戻ってきた「ひと」の日常をリトグラフで表現した。
 普段見過ごしてしまっていた何気ない情景に、ふと足を止めて魅入ってしまうようになった。人々の営みがこんなに温かく愛おしいものなのかと感じている。
モチーフは、ひとりの「ひと」としての自分のアトリエから始まり、誰もが使うであろう傘立てや誰かが食べ終わった蕎麦屋の返却カウンターなどである。
 思い描いたり想像したものを一色、ニ色とリトグラフによって重ねていく行為は、わたしにとってかけがえのない日常である。

石川順子

担当教員より

作者にとって「物」は自己の投影である。

常日頃通う公共施設や愛着のある「物」と対峙した時、「物」が語りかけてくると作者は言う。LIFE=生活というテーマで作品を作っているが、ここに描かれた物たちはリトグラフで制作する為の道具であり、使いやすく配置された物たちだ。おそらく、水道付近の道具たちが一番使用頻度が高いのではなかろうか。作品を観察すると、使い込まれたスポンジの消耗具合、桶や流しの油汚れなど、愛情を持ってリアリティを追求している。特にローラーの劣化具合は秀逸である。リトグラフは基本的に1版に1色を使用するが、最低6版以上は重ねて刷られており、その労力は計り知れないが、そういった苦労を感じさせない清々しさを感じさせる所も魅力的である。造形的な厳しさに裏付けられたこの美しさを版画を通してこれからも追求してほしいと願っている。

油絵学科教授 元田久治