石田智恵子

ISHIDA Chieko

ストリート・スナップにおけるソール・ライターの画面構成力ー被写体・構成要素・撮影スタイルの分析からー

論文|57ページ(22,247字)

作者より

ソール・ライターは1950年代から仕事とは別にニューヨークの自宅周辺をカラー写真で撮り続けた。本論文では写真集『Early Color』と図録『Saul Leiter(2012年)』から93枚を研究対象とし被写体・構成要素・撮影スタイルを分析、それらを踏まえ特徴的な12枚を再分析する事で「画面構成力」を引き出した。その結果、ライターはカメラの特性を活かし独自の視点で世界を再構成、遠近感や時間経過、静と動の対比などを通じて一枚一枚に「強度」を生み出し鑑賞者を惹きつけ続ける事がわかった。

石田智恵子

担当教員より

色彩のもたらす印象が多く語られるライターの作品に対して、1点1点の被写体やフレーミングと構図、画面の諸要素を仔細に点検することで、表現の幅と傾向を具体的に把握した研究。著者の関心が常に「どのように撮影されたことで画面が成立したか」「ライターの興味がどこにあったか」に向けられ、高い発見性につながっている。作品に内在する「画面構成力」と鑑賞者の反応に関わる「写真の強度」との関係が理解できる成果である。

造形学部 通信教育課程 教授 金子伸二