江崎空悟

EZAKI Kugo

ONo.499 絵画を中心とした“全ての”空間の構造と技術の開発に関する研究

インスタレーション|単管パイプ、ロープ、ベニヤ板、古紙、アクリル絵具、ペンキ
H4000 × W4000mm

作者より

絵画は古い形式です。ですがそれが絵画の開発を志さない理由にはなりません。
私は歴史が、絵画の歴史、美術の歴史、現代の美術が確かに自分と繋がっている事を確認したかった。しかし、そんな繋がりはどこにも無かった。だから、少しづつ順番に美術の歴史を喰い、よく消化し、都度、捻れて歪んだ美術史の認識を編み出すことで、私の手が触れる事が出来る範囲で絵画を考えた。
歴史の荒野を自分の足で歩き出す為のプラクティス。

江崎空悟

担当教員より

建築現場で酷使された痕跡が残る鋼管パイプを組み合わせ、4メートル四方の枠組みを規定し、江崎はそこに木材を貼り込んで支持体を用意した。練り上げた古紙の繊維に顔料を調合し、自作の絵具として支持体へ漆喰のように塗りつけている。鑑賞者は建築物と絵画がじつは似た構造であることに思い至るのだが、これが絵画を実践する場であることを江崎は主張している。即興的にもみえる色面は、じつは《天子摂関御影》や土佐光起の《六歌仙図》など、大和絵から引用し、綿密に検討した結果であるのだという。
床には画面から滴り落ちたものとして、古紙繊維が左官の仕事のように塗り広げられ、鑑賞者はふかふかした感覚を楽しみながら、自然に床面の存在と重力を意識させられるわけだが、建築空間の、そして絵画のゲシュタルトには可塑性があり、身体的経験により組み換えられることを本作は語っている。

油絵学科教授 諏訪敦