童佳奕

TONG Jiayi

言語とイメージ、翻訳による知識と編集の変遷
—江戸時代中後期の蘭学訳書をめぐって—

論文|紙、ディスプレイ

作者より

「翻訳」は単なる言語間転換ではなく、新旧概念の創造・伝播や新思想の受容、異なる階級・集団間の橋渡しも含む。本研究は江戸時代の蘭学を「新しい知識」「新しい言語」「新しいイメージ」に分け、「テキスト・内容」「翻訳方法」「図と視覚表現」に焦点を当てる。これらは相互に影響しながら発展し、鎖国下の日本に西洋文化を浸透させた。翻訳と編集の視点から、新しい世界の形成を考察する。

童佳奕

担当教員より

本論文は鎖国下の江戸時代中後期に解禁された蘭学を対象に、日本人が未知の言語をどのように理解し吸収したか、またその過程が日本人の視覚イメージ(図像と文字の形象、世界認識)に与えた影響について、膨大な一次資料を用いながら150年の変遷が詳細に記述されている。キーワード「翻訳」を軸に、当時の日本人の知識への飽くなき探究心、さらに社会への伝播というダイナミックな現象を包括的に捉えようとする本論文が持つ意義は大変深い。複雑な文化の衝突を、「ことば、人物群、出来事、出版メディア、イメージの変遷」などと捉え適切にまとめた編集力は突出している。またデジタルアーカイブも兼ねたインタラクティブな年表デザインも素晴らしい。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策