朴愛里

PARK Aeri

親族
Relatives

海底
Seabed

余波
Aftereffects

海鳴り
Roar of the Sea

故郷の春
Spring in My Hometown

佇む
Stand Still

紙、銅版画
H690 × W950mm、H595 × W795mm、H525 × W710mm、H1000 × W1450mm、H370 × W370mm、H125 × W87mm

作者より

銅版を「鏡」として捉え、自身の生い立ちや一族の歴史、ルーツ、民族のアイデンティティ、それに起因する私自身の感情や世界の捉え方などを銅版画として表現しています。その中でも、「親族」は、親族との繋がりや断絶について、「海鳴り」は、個人と共同体・国家との関係について考えながら制作しました。手元のプライベートな記録や記憶を版表現を通してパブリックにすることの意味を探ぐりながら、制作を続けたいと思います。

朴愛里

担当教員より

朝鮮半島から海を渡って日本にやってきた祖母の足跡を、古い写真をもとに追体験しながら一族の歴史、そして自らを重ね合わせることでスタートした一連のシリーズ。その核となるのはアイデンティティーの探求である。銅版を鏡と見立て、彼女自身の「生」を映し出すのだ。金属にしては比較的柔らかく、温かみさえ感じる銅。腐蝕銅版画(エッチング)という手法に内包される時間や歴史性、繊細さに身を委ね、版を介することで生まれる偶然性や間接性、複製性などのメディウムの特性が寡黙な制作をどこまで押し上げてくれるのか期待は大きい。イデオロギーを声高に叫ぶのではなく、凛とした佇まいに秘めた静かな情感が見る者の心を打つ。

油絵学科教授 高浜利也