魏洋昊

WEI Yanghao

身体尺—山のシンメンモク
body scales-the true shape of mountain

コンパネ、角材
H1350 × W1540 × D710mm

身体尺—重力のミチ
body scales-gravity path

コンパネ
H3700 × W1500 × D910mm

作者より

「山を登ること=階段を登る。階段を登り続けるうちに、足裏の摩擦によって階段の形も必ず変化していく。」
「山頂に到達した瞬間、視野は一気に広がる。山の真の姿を把握することはできない、それは、自分自身がその中心にいるからである。」

体験とは、身体を通じて経験すること。彫刻もまた同様である。展示空間にいるあなたは、どこからその体験を始めるのだろうか。

魏洋昊

担当教員より

「展示する美術館のアトリウム1は上階のアトリウム2とスロープからも作品を見ることが出来ます、そこからも見てもらいたいです。」と魏 洋昊は言う。「重力のミチ」はコンパネを集積し、1つのピースは18×20×30cm。それらを約半分の長さにずらせて斜めに組み合わされた段のある塔の様な形態で高さは3m70cmである。それはアトリウム2の床面と同じ高さに設定されているという。それを垂直に対し8度程の傾きを持たせ設えられている。垂直に対して45度に設定された階段状の柱の様な形態を斜めに自立させることにより、階段面はかろうじて登る事の出来るであろう傾きのように感じさせる。その傾斜した複数の上面には足跡の痕跡がすり鉢状に彫り込まれ、その底には穴があり、闇が点となり顔をのぞかせている。それらは身体の存在と不在性を同義的に強調していようだ。それらは視覚性と身体性を刺激してくる感覚を覚えさせる。天に誘うという象徴性と登るという能動的な身体性をも同時に示唆しているのだろう。そして、私は上階のアトリウム2とスロープに移動する。アトリウム2に向かうために実際の階段を登るという、やや軽めの身体的負荷も感じることになる。スロープに移動すると「山のシンメンモク」に彫り込まれた、アトリウム1での作品と同じ立ち位置から確認する事の困難であった図像が、魏 洋昊の言う「高尾山の頂上から遥か向こうに見える山々の重なり」として眼前に現れる。そして「重力のミチ」の頂上にも足を揃えた足跡が狭い場所に設えられている。魏 洋昊は積層や構成、カービングという作業を山を登るという計画的で一定のペースでの行為を繰り返しながら、身体的負荷を自覚しながら頂上に向かう様に制作し、眼下に見える風景を幾度もイメージしたのだろう。そして、まだ見ぬ空間の特定された場所の頂上からの風景をしっかりと見据えていたのだ。

なるほど、、彼は自己の体験から感じたリアリティと彫刻としての複雑に絡み合うテーゼや要素を遺憾なく機能させる表現に成功したのだと。私はその瞬間に立ち会う事が出来たのだ。

彫刻学科教授 三沢厚彦