さ、行こう。
木製パネル、糸、アクリル樹脂H250 × W8000 × D100mm
とらえられたら
鉄、糸H110 × W8012 × D100mm
絵を見ていると、自分の視点が手前と奥、上下左右を細かく移動して行ったり来たりしていると気付く。そして、表面にあらわれた色や凹凸だけでなく絵具が重なり層になった画面の奥のことまでも、行き来する視点で読み取っているとわかる。 壁に掛かった作品に対峙したとき視点は思ったよりも立体的に動くこと、動きながら何かを見つけようとすることを形にしたいと考えた。 坪内さとか
絵画を解体し再構成するような半立体を制作していた坪内の興味の中心には「絵を見るときの視線の動きは指でなぞる感覚に似ている」という独自の捉え方があった。上下左右、また奥行きを確かめるように絵の表面をなぞる架空の指。触覚的な視覚。近年の作品ではキャンバスを縫い、支持体そのものを変形させることで複雑な表面の揺らぎをつくり出していたが、今回、素材を大きく変えることでその感覚はさらに先鋭化した。 壁に上下に配された2つの作品は木製パネルと透明なアクリルの棒、また細い鉄の棒によってつくられた構造体に糸を張ることで成立している。それぞれの作品は異なる構造を持ちながら、異素材がつくり出す微細な皮膚感覚のずれや、視線の端に引っ掛かる極小の何かが、長さ8メートルという異常なサイズに引き伸ばされている。そのため長大な作品全体と部分は構造としては一致していながら、鑑賞者の体験としてはどこかで分断された別々の体験のように感じられる。 作品鑑賞とは単に目を歓ばせることではない。坪内の作品にあるのは、今、ここ、でしか体感できない小さな驚きが、うねるように続いていく触覚的な経験である。 油絵学科教授 袴田京太朗
作者より
絵を見ていると、自分の視点が手前と奥、上下左右を細かく移動して行ったり来たりしていると気付く。そして、表面にあらわれた色や凹凸だけでなく絵具が重なり層になった画面の奥のことまでも、行き来する視点で読み取っているとわかる。
壁に掛かった作品に対峙したとき視点は思ったよりも立体的に動くこと、動きながら何かを見つけようとすることを形にしたいと考えた。
坪内さとか
担当教員より
絵画を解体し再構成するような半立体を制作していた坪内の興味の中心には「絵を見るときの視線の動きは指でなぞる感覚に似ている」という独自の捉え方があった。上下左右、また奥行きを確かめるように絵の表面をなぞる架空の指。触覚的な視覚。近年の作品ではキャンバスを縫い、支持体そのものを変形させることで複雑な表面の揺らぎをつくり出していたが、今回、素材を大きく変えることでその感覚はさらに先鋭化した。
壁に上下に配された2つの作品は木製パネルと透明なアクリルの棒、また細い鉄の棒によってつくられた構造体に糸を張ることで成立している。それぞれの作品は異なる構造を持ちながら、異素材がつくり出す微細な皮膚感覚のずれや、視線の端に引っ掛かる極小の何かが、長さ8メートルという異常なサイズに引き伸ばされている。そのため長大な作品全体と部分は構造としては一致していながら、鑑賞者の体験としてはどこかで分断された別々の体験のように感じられる。
作品鑑賞とは単に目を歓ばせることではない。坪内の作品にあるのは、今、ここ、でしか体感できない小さな驚きが、うねるように続いていく触覚的な経験である。
油絵学科教授 袴田京太朗