吉田紋

YOSHIDA Aya

忘れじの
Things not to forget

木製パネル、雲肌麻紙、岩絵具、銀箔、墨、木炭
H1620 × W3909mm

作者より

今、世界には戦争や紛争に直面している人たち、また災害や貧困、差別、いじめ、誹謗中傷、性被害等で苦しみ戦う人たちがいる。そんな「災い」と戦う人たちの象徴として、今回の作品のメインに強い女性のリーダーを置いた。傍らの若い女性たちは性暴力の対象として、子孫を残す道具として「悪」が自分の為に残したという設定で描いた。そして、「災い」や「悪」の象徴として三つの首を持つ獣を描いた。荒れ狂う獣は権力を振り回し、欲をむさぼり、暴力で人を苦しめる。メインの女性のリーダーは暴力に屈することなく、自分の未来は自分で決めると自らの首に光る刃を当て抗う。

吉田紋

担当教員より

我々の周りに在る、理不尽な様々な災いへの抵抗を彼女は描いた。戦争や差別や貧困、最も身近であるインターネットによる誹謗中傷、いじめ、性被害、些細な人間関係から来るストレスまで、全てこれらを『悪』とし、この災いに立ち向う象徴として3人の女性像を描いた。
背景には災いの象徴である魑魅魍魎が大きく迫り、か弱い女性達のある者は必死に耐え、ある者は気が触れ、またある者は果敢に立ち向う。この作品はモノトーンからなるが、彼女は墨、木炭などの炭素からなる半永久的に普遍な画材と日本画特有の岩絵具の黒色を併せ、実に絶妙にこれらを使いこなしつつ、和紙を支持体にした女性の観点からでしか描けぬ優れた大画面をここに遺したのである。

日本画学科教授 岩田壮平