李嘉良

LI Jialiang

近現代中国における文字の表示システムについて歴史的経緯を概観する
Historical overview modern chinese of writing systems

論文|106ページ(38,583字)
パネル|H1200 × W2340mm

作者より

明朝時代から始まり、清末から新中国の成立にかけて、中国社会は多くの漢字改革運動を経験した。それは新中国成立後の簡体字改革とピンイン形成までの期間をも含んでいる。これら明朝時代以後の数百年にわたる出来事は、現代の中国語の言語生態系に深い影響を与えた。
大学時代に注目していた漢字の視覚的な側面の問題と、バリアブルフォントの研究を振り返ると、これらは漢字や中国語の生態系全体のごく一部であることが今では理解できる。大学院に入学してからの2年間、視覚中国の漢字システム全体の進化過程に注意を向けることにした。
広範な歴史資料を調査する過程で、漢字改革史や言語伝達における視覚的な機材・機器について社会的・専門的にも知られていない情報を多数得ることができた。これらの要素は互いに影響し、広範な分野に直接にも間接的影響を及ぼしている。今回の研究において、漢字改革運動が出発点となり、印刷技術、通信、視覚デザインなど多くの分野が交差する歴史が浮かび上がっていることに私は気づき始めたのである。
言語と文字の概念は、多くの視覚伝達製品の形成において最も基本的な要素となっている。にも関わらず、視覚伝達の観点から、中国の漢字改革およびそれに関連する分野について包括的に整理された研究はまだ存在しない。この研究は、この空白を埋める試みである。そのために、中国の漢字改革に関する総説、歴史文献、専門論文を研究し、漢字改革運動の主要な形式に基づいて、関連する専門分野に分類し、同時代の印刷技術、通信分野などを整理する。歴史論と比較分析法を組み合わせ、時間の経過に従って整理と研究を行い、近現代の中国の漢字とその関連領域に関する包括的なレポートを文献として、私は視覚的にも復元し再生し、今後の言語伝達についての考察の一助になる資料を目指している。

李嘉良

担当教員より

李がテーマとした「近現代中国文字表示」についての専門書はない。漢字の成立、表記法、記述文字の形象、表示技術、中国語の言語体系、中国語の歴史、海外との交流による変遷……。百学連関、中国語に関するあらゆる言語情報をそれぞれに収集し、関係性を整理し、分析をして再構築する。表記についての利点と問題点を歴史を紐解き炙り出す。ラテンアルファベット圏と漢字圏の文字数と言語構造との関係、そして表記システムの違い。気の遠くなるような研究だ。焦点は明の時代から新中国成立までの500年にわたる漢字改革運動。言語表記法は西洋知の流入によって、翻弄され、揺れ動く。揺れ動くのは表象的な言語表記だけの問題ではない。中国という国のアイデンティティそのものだ。李嘉良の研究によってその奥深さと怖さを思い知らされる。

視覚伝達デザイン学科教授 白井敬尚