張洲睿

ZHANG Zhourui

the last sunset

夢の中の安眠
dream in dream

永遠に帰れない故郷
hometown that I can’t go back

旅人の夢
traveller’s dream

キャンバス、パネル、油絵具
H1303 × W1940mm、H1818 × W2273mm、H1620 × W2606mm、H1303 × W1940mm

作者より

卒業制作では、私は自分の夢から構成される物語の結末部分を描きました。これは私が故郷を探し求める物語です。今回の四枚の絵は、私が故郷の小屋に戻り、その小屋で自殺する物語を主に描いています。この絵のシリーズでは、「故郷を探す」、「自分を探す」、「自殺」はある程度同じ意味を持っています。このシリーズの作品で私は生命の傷感情を表現したいと思っています。

張洲睿

担当教員より

張洲睿(チョウ・シュウエイ)は、中国の大学で視覚伝達デザインを学んだ後、デザイナーとして働きながら独学で油絵を始めてその魅力に目覚めたという。そして、より自由に絵が描ける環境を求めて日本にやってきた。
彼は自身が見た夢を記録し、それらを一定期間が経過した後に分析し再構築して新たな物語を作り、それを元に絵を描くという手法で制作を続けている。そうすることで、夢をより客観的な視点から絵画で表現しようと試みている。
物語は記憶の中の故郷を探しに旅に出た主人公が、様々な状況に遭遇しながら幼い頃に住んでいた家にたどり着き、そこで自死するというあらすじである。修了制作では、物語のラスト近く、洪水によって水が押し寄せてくる家で自死した後、別の世界へと向かうまでの場面を描いた4点の絵を展示した。シンプルに描写された形とモノトーンに近い暗めな色調とが相まって、画面には飄々としながらも不穏な静けさが漂っている。空から射す微かな光にはほのかな暖かさがあって、その先に何かがあるかもしれないという期待を抱かせる。死が描かれているが、その死は終わりではなく新たな始まりを示唆しているように感じる。絵を観ていると死への思いを強めるかもしれないが、死を意識すればするほど生への思いは強まってくる。
チョウ・シュウエイの絵は、生きるとは何かということを考えさせ、その思いを強くさせる。

油絵学科教授 小林孝亘