鹿野結菜

SHIKANO Yuina

Japonesia

インスタレーション|木材、ベニヤ板、アクリル絵具、火山灰、ほか
サイズ可変

作者より

ヤポネシア。
それはこの国を様々な文化と民族が入り混じる諸島国家という意味を成す。元々は作家の島尾敏雄が提示した、日本「Japan」と島々「nesia」を掛け合わせた造語である。
その中には、従来の日本の姿とされるものを超えた、無国籍性すら感じる文化や風景がある。
この展示は渡来系、縄文系、熊襲・隼人といった民族、仏教以前の神道とアミニズムが入り混じった信仰、その土台を支た異界のような自然風景に焦点を当てた旅である。そして日本列島を画一化された国民国家のイメージから解放し、私たちの魂に無意識に組み込まれているであろう、もうひとつの日本の姿を模索する。

鹿野結菜

担当教員より

一見無秩序に配置されたような大小の絵画群、そのうちのいくつかは看板のように自立し、鑑賞者の体感を促す。床には曲がりくねった河のように白い小石が配され、空間全体を貫きながら同時に関係性をずらすようにして、混沌とした異世界をつくり出している。
作者はワンダーフォーゲル部の一員として全国各地の山々に登り、その記憶をなぞるように制作する。支持体の木製パネルを時には穴が開くほど深く彫り刻み、現地で採取した火山灰を絵具に混ぜるなどの直接的なやり方でそのイメージに迫っていく。そうして現れたのはシニカルなユーモアすら漂う毒々しい色彩による異形の山々である。作者は記憶の中の風景を借りて、この日本という自明の場所の表層を引き剥がし、その下にある血が滴るような原初的な世界を私たちの前に提示しようとしているのではないだろうか。

油絵学科教授 袴田京太朗